東洋経済_2017/11/09『正社員になれなかった56歳男性の厳しい貧困
夕食は毎日、卵かけご飯か納豆ご飯だけ』
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「歯医者は高いから。虫歯を放っておいたら、抜けてしまいました。(口腔内を)見られたくなくて、最近はあまり笑わなくなりましたね。…」
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「(食事は)肉なんて一度も出たこと、ありません。NPOっていうのは非営利なんですよね。なのに、法人の理事長はランクルとか、エルグランドとか、高級車をとっかえひっかえしていましたよ。後になってテレビで『貧困ビジネス』という言葉を知りました。この施設のことだと思いました」
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おカネか命か、日々選択を迫られる
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企業による脱法行為や派遣切り、貧困ビジネス――。キイチさんの来し方から浮かび上がるのは、行政の不作為である。企業が社会保険料などの負担を避けるため、実質的な従業員を個人事業主として扱う手口は今に始まったことではない。しかし、行政が本腰を入れてこの問題の改善に乗り出したという話はついぞ聞いたことがない。また、工場など製造業への派遣は改正労働者派遣法による規制緩和で認められたが、雇い止め対策などに目が向けられることはなかった。貧困ビジネスも社会問題化して久しいが、野放し状態。彼が被害に遭ったと訴えるNPO法人は、今も厚生労働省所管の「福祉医療機構」が運営する情報サイトで入居者の募集を続けている。
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